ブックカフェ…優しい孤独…「月と六ペンス」
京都にはブックカフェなるものが多い。お好きに手にとっていいですよ、とばかりに雑然と、そこそこに本が並べてあったりする。そういえば、私がはじめてこの地に来て行ったブックカフェが、「ことばのはおと」だった。
猫の置物がたくさんあって、京町屋らしい、瀟洒な中庭もある。テーブルには「ブックカフェなので、お話しは小さな声でお願いします」という但し書きが。うわ、京都のカフェって面白いな!と最初に思ったのがここだった。
本がたくさんあるとはいえ、謎の置物やら、食べそこなった「にゃんこパフェ」(数が限定なので、おそらく開店から並んでいないとありつけない)などが気になって読書などできるものではない。近くに座っていたカップル客も、読書というよりはやたらとオセロゲームをやりたがっていた(ちなみにどうぶつ将棋や古いカルタなどもありました)。
面白いブックカフェに行きたいというのでなく、純粋に本を読みに行くのならば、「月と六ペンス」がもっともふさわしい。古いアパートメントの一室。「こんなところに?」とひっそりと在るのがまた、本を読む人だけが集まるひみつの場所のようで心くすぐられる。「おひとりさま」であることが前提なので、席はすべて窓に向けて一人掛けである。
静かに静かに時が流れる。ほかのお客さんたちも、たいていはみな一人で本を読んでいる。優しい空間。現世を忘れて夢の世界に浸るのにぴったりの空間だ。「月」は夢の象徴、「六ペンス」は現実の象徴。オーナーが好きな作品だったのもあるのかもしれないけれど、なんともふさわしい店名をつけられたものである。
お店に置かれているオーナーの本は、いつも自前の読みかけがあるので、一度も手にとったことがない。たまには気まぐれに手にとってみようかな。