晴れ、ときどき京都

3年間の京都暮らしから地元に帰ってきました。

見渡せば花も紅葉もなかりけり

三年間の京都暮らしを終えて、地元に戻ってきてから半年以上の時が過ぎた。帰ってきてから時間の経過が長く感じられる。新しい生活になったから、というのもあるし、地元に帰って早々に、大きな喪失感を覚えるできごとがあったからでもある。

 

見渡せば花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕暮

 

京都の紅葉を見ることができない秋がめぐってきて思う。このさみしさは、あの華やかでいて癒しに満ちた、燃えるような赤と黄色の世界を見てきたからなのだと。あの美しさを知っているからこそ、いまは「ない」ことが悲しい。そして、もうひとつの喪失感も、楽しい日々がたくさんあったからこそ、いま、その日々が遠くなってしまってさみしいのだと。

 

しかし、なんだかんだで人は立ち直っていかなくてならないし、また立ち直るようにもできているのだ。立ち直ってしまうことへの若干の悲しさも感じつつ。なぜかというと、立ち直ってしまうとよけいに「遠く」なってしまう気がするからなんだ。遠くなっていくことに変わりはないのにね。

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京都、どこが良かったですかーって、よく聞かれるけども、やっぱり嵐山が好きだったな。二尊院とか大覚寺とかずっと奥の方まで紅葉狩りが楽しめる。

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そして、トロッコ嵯峨駅そばの老舗喫茶店ヤマモトもおすすめなのです。

ときには渋く優雅に、老舗珈琲店。

あれよあれよというまに、京都での一年が過ぎ去ってしまった。そして、私は心底京都が好きになってしまった。

 

ここで一つの悩みの種が生じる。そもそも、京都に住むのは二年限定でなくても構わない、という問題だ。三年でもいいし、なんなら夫が再任用されるまでの間(さすがに退職→再雇用されたら地元に帰らなくてはならないからね…)いたってかまいやしないのだ。

 

桜が散ってしまっても、京都の樹木は眼を瞠るほどに美しい。若楓の透明感のある緑。これが秋になったら色づくのだから、そりゃ京都の紅葉はきれいなはずだ。あぁ、京都にいたいと思う。でも、地元も恋しい。京都にいたい。地元も恋しい。この気持にどう折り合いをつけたらいいのか分からないというのが正直なところだ。

 

そんな折、地元から友人が京都まで遊びに来てくれた。メインは大阪での観劇とはいえ、京都も観光する気満々。一日は下鴨神社に行って恵文社に行って、南禅寺。もう一日は、伏見稲荷祇園でかき氷。彼女のあらゆる要求にすべて応えるべく頑張った。というか、ネットの経路案内さまさまなのであった。これがなかったら、私はこんなに快適に京都を過ごせなかったよ。

 

彼女の希望した喫茶店にも何軒か案内。会うなり、昭和7年創業のスマート喫茶まで。ほぼランチ代わりである。私もこちらのホットケーキはまだ食べたことがなかったので、喜んでいただく。画像見ていまさら思うけども、ホットケーキは思いっきり最初にシロップかけた方が絵になりますわね。

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さてさて、観光いろいろは省略して、その日の最後を〆たのは、昭和9年創業のフランソア喫茶室。重厚、レトロロマンな店内と耳になじみのよいクラシックに気持ちが高鳴る。

 

珈琲は、ブラック珈琲とフレッシュクリーム珈琲から選べて、クリーム入りのものはちょっとミルクの味わいが濃厚過ぎて牛乳珈琲に近い(でも、すごく美味しい!)。そして、この優雅な喫茶店で、昭和初期の文化人が芸術や反戦について、語り合っていたのかー、と思うとそれもまた感慨深いのです……。

 

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外観も素敵ですよねぇ。強行軍もなんのその、友人も大満足のようでした。

 

そして、私はいったい京都に何年いるの?という件についてはまだ結論出てません……。

 

京都河原町:フランソア喫茶室

スマート珈琲店 - 昭和7年創業、京都三条の喫茶店

お茶事カフェの恍惚。

 

京都に来てから、「お茶会に行きたい」という思いを募らせてました。それはもう、執念のごとく、ねちねちと。観光客向けのお茶席体験などたくさんあるし、高台寺のお茶会にも何度か行った(北政所茶会は、まさにお茶会のテーマパーク!一日かけていろいろなお席を楽しめる)のだけど、やはりあこがれは個人のお宅におよばれする個人的なお茶会なのですよね。

 

結局、お茶会に行きたい一心で、お茶の先生を探し、無事に(?)そういう機会にも恵まれているこの頃なのであります。

 

そんななか、そういう「つて」がなくても行けるお茶事カフェがあることを知りまして、そちらにも早速出かけてまいりました。このあたりの話になると、もう身バレが心配になってくるので、場所は記しません……。

 

時期が時期だけに、クリスマスな趣向で。床にはもみの木のさをり織りが。結界にはカスピ海をかたどった杉の木が使われていて、薄茶器は唐松柄、茶杓には山水画、水差しにも青海波と海づくし。

 

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点々が星のように見えるので銘を「宇宙」と名づけました、というお茶碗もとても素敵でした(泡立ちがなんとクリーミーな)。

 

いろんなお話を聞かせていただきましたが、「お茶といえば、一保堂が有名ですが、一保堂には物語がない。茶会では亭主と客との語らいがとても重要なので、”君は通圓のお茶を使った方がいい。あれなら物語があるので、話しやすい”と、その時の師匠に勧められた」というお話が印象的でした。

 

ちなみに、濃茶は「太閤さん」、薄茶は「釣瓶の昔」をいただきました。至福だ……。

 

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そして、主菓子は、蕭月の「木枯らし」。

 

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お干菓子も、クリスマスらしく、可愛らしく。金平糖は青りんごの味がしました。

 

いつも思うことですが、お茶会の亭主までされるような方は、点前や作法に優れているのみならず、知識があり教養があり(一口に教養といっても、茶道具のみならず、歴史、お香、茶花、さまざまなお道具の取り合わせのセンス…etc…と、お勉強しなければならないことの膨大さに目がまわる)、いつか少しでも私はその境地までたどり着けるのかと気が遠くなったりもします……。

 

まぁ、一歩づつですね。

「カステラドパウロ」で異文化比較体験

晴れてしまった。今は梅雨まっさかり。雨だったら、今日くらいはおとなしく自宅で本を読んでいるつもりだったのに。なら、行くしかないよね!とまだお昼前だというのに外に飛び出してしまった。ちょうど昨夜すごく気になるお店を見つけていたのだ。

「カステラ」のルーツはポルトガルの伝統菓子「パォンデロー」にあるのだという。16世紀の長崎や平戸に伝えられた「パォンデロー」は、日本で独自の進化を遂げた。味だけではなく見た目にもこだわり、450年かけて洗練されていった。その「カステラ」を故郷であるポルトガルに里帰りさせて店をひらき(長崎で修業されたらしい)、さらにはポルトガルの伝統菓子を今度は日本にも伝えようと京都に店を開いたのが、「カステラドパウロ」の店主であるパウロ・ドゥアルテさんなのだった。

……とまぁ、そこまで調べてお店に出かけたわけではなく、最初はすごく可愛いお店なので、ランチでも、というくらいの気分であった。まだちょっと時間早めだったのに頼んだランチがこちら↓

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ランチは日替わりの一種類だけで、スープやドリンクは選ぶことができる。お料理にしろお菓子にしろ、とにかく赤ワインが合うらしい。下戸には悔しい限りである。仕方なくアイスティーとスープはガスパッチョをいただく。

待ち時間の間、「パォンデロー」に関する(上記のような)逸話を読んでいたら、パォンデローにふつふつと関心が湧いてきた。かつ、下記のようなポルトガル人のおおざっぱさもなんだか楽しく思えてきて。

どうしてポルトガルではパォンデローがカステラのように進化しなかったのでしょうか?答えはポルトガル人は日本人のように物事に深くこだわらない人たちだからです。ですから、何世紀もの間、パォンデローはポルトガル人の菓子職人の努力なしにきたわけです。つまり、今もってパォンデローを焼くのに微妙な感や技術は必要ありません。「まぁまぁの味で、まぁまぁの形」であればいいのでしょう。作る側も食べる側もそれ以上を求めないのですよ。残念ながら。 『ポルトガルのお菓子工房』より 

こういうの、「日本すごい!」案件になってしまうのだろうけど、そういうポルトガル人のおおらかさもいいじゃないですか。「雑だ、雑だ」といろんな日本人に言われ続けてる私ですので、個人的には、けっこう気が合いそうな気がします。

「パォンデローが気になります……」とお店の人に訴えたところ、「パォンデローも地方によっていろいろありまして、一口づつお試しできる”食文化比較体験セット”がおすすめです」と言われて、結局そちらも注文(…食べ過ぎです…)。

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いろいろな地方のパォンデロー

一番前方にあるカステラらしい形をしているのが、店主パウロさんのカステラです。どれもとても美味しかったですよ。……日本にわざわざ修業しにきたことといい、パウロさんは物事に深くこだわるレアなポルトガル人なのか…などといたらんことを思いながら店を後にしました。

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店内のキュートさ!

 

 

castelladopaulo.com

 

 

 

ブックカフェ…優しい孤独…「月と六ペンス」

京都にはブックカフェなるものが多い。お好きに手にとっていいですよ、とばかりに雑然と、そこそこに本が並べてあったりする。そういえば、私がはじめてこの地に来て行ったブックカフェが、「ことばのはおと」だった。

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猫の置物がたくさんあって、京町屋らしい、瀟洒な中庭もある。テーブルには「ブックカフェなので、お話しは小さな声でお願いします」という但し書きが。うわ、京都のカフェって面白いな!と最初に思ったのがここだった。

本がたくさんあるとはいえ、謎の置物やら、食べそこなった「にゃんこパフェ」(数が限定なので、おそらく開店から並んでいないとありつけない)などが気になって読書などできるものではない。近くに座っていたカップル客も、読書というよりはやたらとオセロゲームをやりたがっていた(ちなみにどうぶつ将棋や古いカルタなどもありました)。

古書と茶房 ことばのはおと

面白いブックカフェに行きたいというのでなく、純粋に本を読みに行くのならば、「月と六ペンス」がもっともふさわしい。古いアパートメントの一室。「こんなところに?」とひっそりと在るのがまた、本を読む人だけが集まるひみつの場所のようで心くすぐられる。「おひとりさま」であることが前提なので、席はすべて窓に向けて一人掛けである。

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今日もカフェめぐり。マンションの一室がカフェになってる🐰

静かに静かに時が流れる。ほかのお客さんたちも、たいていはみな一人で本を読んでいる。優しい空間。現世を忘れて夢の世界に浸るのにぴったりの空間だ。「月」は夢の象徴、「六ペンス」は現実の象徴。オーナーが好きな作品だったのもあるのかもしれないけれど、なんともふさわしい店名をつけられたものである。

お店に置かれているオーナーの本は、いつも自前の読みかけがあるので、一度も手にとったことがない。たまには気まぐれに手にとってみようかな。

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「それから」…映画をひとりで楽しむようにカフェをひとりで楽しんでみる

イノダコーヒ伊右衛門カフェのような王道カフェめぐりも、もちろん楽しいのだけれど、私が惹かれるのは、こっそりと静かに、心のなかにしのびこんでくるような優しくて小さなカフェだ。喧噪を離れて、ここから先は異世界……とでもいうような静謐なカフェ。

こういうときめきは何に似ているのかな、と考えてみたら、思いあたるものがあった。

まだ若い時分、熊本で電気館という映画館によく通っていた。今でもDennkikanという名の、単館系のいい映画館なのだが、気分の高まりとしては、「若い時分に」「古い映画館」で、自分にとってはよく分からない文化や世界が見られる、たとえば東欧などの謎映画を見に出かけていっていたときの高揚感に一番近い。

ひとり映画はあっても、ひとりカフェって、そんなに(というかそこまで)楽しいものじゃないのではないか、とこれまで思ってきた。読書のために入る、時間調整のために入る、小腹を満たすために入る。そしてそういう用途のためのカフェもたくさんある。

しかし、世界観が完成されたカフェは、1本の不思議な映画を見にいくようなものだ。気の置けない友人が道連れであれば、それもまた楽しいだろうが、ひとりカフェも全然アリじゃないか!

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……そんな感じで本日は「それから」に行って参りました。

見落としてしまいそうな、看板がそうっと掛けられている。

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この路地の奥にお店があります。写真撮影は禁止なので、今回は外観のみ。

お店に入ると、店主さんから、「おおきに、ようこそ。よくここが分からはりましたなぁ」と声をかけられる。席は6席しかないので、どうぞ相席で、ということで先客の方と同席した。硝子のテーブルの上に薔薇の花が豪勢に生けられている一方で、縁側があり(黒猫のオブジェも素敵なのだ)、骨董品があり、和と洋とが極上の趣でしつらえてある。

先客の方もおひとりだったので、熊本のことやカフェめぐりのことなどをお話しした。おすすめのカフェなども教えていただく。教えてもらったなかでは、二条小屋というカフェが気になる(なんと、立ち飲みカフェなのだそうだ)。

「コーヒーカップ、凄く素敵ですね」と店主さんに言ったら、「これはオールドノリタケで、昭和20年代のものなんですよ。そんな古いもんには見えへんでしょう」と教えてもらった。確かにすっきりとしたデザインがとてもモダンに見える。

「京都はどないですか」と店主さんに聞かれる。「すごく楽しいです」と私。「そないでしょう。いけずな人とかおまへんですからなぁ」

まるで個人的に人のお宅におじゃましたかのようなカフェ体験。週末限定だというお菓子をいただくために、またそのうち訪れる予定である。

 

 

本当に知りたいことは答えがない…カフェ・モンタージュ

12年間一緒に暮らしてきたうさぎさんが数日前からほとんど寝たきりになってしまった。先月のはじめくらいから、遊んでいても転ぶようになり、来るべきものが来てしまったような思いでいた。

我が家に迎えたのは12年前の5月5日だが、誕生日はそれよりも数ヶ月前になるはずだから、12年以上生きている。人間でいえば90歳くらい。「充分に生きた」年齢であると言える。

……実は病院にはつれていっていない。病院につれていけば治るのか?治らないだろう。元気に自由に駆け回るようにはもうならないだろう。「延命」という意味でなら可能かもしれないが。もちろん、なるべくうさぎさんが快適に過ごせるような環境をつくるような努力はしているつもりだけども(人同様、うさぎ界にも高齢化が進んでいるようで、いろいろな介護用品が販売されていたりする)。

生あるものは、いつかは必ず死ぬ。私も死ぬ。いつか二度と会えなくなる日が来る。その日が伸ばせるならば伸ばせた方がいいに決まっている。でも、明らかに老衰で、弱っていっているものを「治療」するのは、どうなのか。むしろ酷であったりしないのか。

そういえば、もうずいぶんと、あの可愛らしい「ぷぅぷぅ」といううさぎの鳴き声を聞いていないなぁ…(あの鳴き声は、機嫌のいいときに発する「遊んで」とか「かまって」という意なのだと解釈している)。

……そんなもの思いを抱えつつ、今日出かけたのはカフェ・モンタージュ。小さな劇場として、定期的に公演がありつつ、公演がない日はカフェという形態。運が良ければ、リハーサル風景を見つつお茶を飲めたりすることもあるらしい。

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扉を開けるとそこには圧倒的に優雅な世界が広がっていた。凛々しく鎮座するスタインウェイ。うるさすぎず静かすぎない適量の音で流れるクラシック。中央の座席は立派すぎて、座るのもしのびない感じなので、隅の方の可愛らしい席にこっそりと座った。

癒される以上に、その世界の豪奢さに気圧されてしまう(…落ち着かない)ので、ここはぜひとも何度も通わないともったいない。

バターサンドとハーブティーをオーダーした。

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かっわゆい。そして、すごくおいしいです。フォークやナイフなどは使わず、がぶっといってくださいと説明される。

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バターサンドの下にはこんな紙が入ってました。「本当に知りたいことは答えがない」。なんだかもう、やることなすことかっこいいな!

ところで、我が家のうさぎさん。ほぼ寝たきりになってはいますが、よく食べるは食べる。寝たまんまだとそんなには食べないので、起こして姿勢を保てるように支えてあげてるとごはんにがっついてくることが多いです。思ったよりも、もっとながく一緒にいられるのかな?どうなのかな?最期まで大事にするからね。

 

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