晴れ、ときどき京都

3年間の京都暮らしから地元に帰ってきました。

「それから」…映画をひとりで楽しむようにカフェをひとりで楽しんでみる

イノダコーヒ伊右衛門カフェのような王道カフェめぐりも、もちろん楽しいのだけれど、私が惹かれるのは、こっそりと静かに、心のなかにしのびこんでくるような優しくて小さなカフェだ。喧噪を離れて、ここから先は異世界……とでもいうような静謐なカフェ。

こういうときめきは何に似ているのかな、と考えてみたら、思いあたるものがあった。

まだ若い時分、熊本で電気館という映画館によく通っていた。今でもDennkikanという名の、単館系のいい映画館なのだが、気分の高まりとしては、「若い時分に」「古い映画館」で、自分にとってはよく分からない文化や世界が見られる、たとえば東欧などの謎映画を見に出かけていっていたときの高揚感に一番近い。

ひとり映画はあっても、ひとりカフェって、そんなに(というかそこまで)楽しいものじゃないのではないか、とこれまで思ってきた。読書のために入る、時間調整のために入る、小腹を満たすために入る。そしてそういう用途のためのカフェもたくさんある。

しかし、世界観が完成されたカフェは、1本の不思議な映画を見にいくようなものだ。気の置けない友人が道連れであれば、それもまた楽しいだろうが、ひとりカフェも全然アリじゃないか!

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……そんな感じで本日は「それから」に行って参りました。

見落としてしまいそうな、看板がそうっと掛けられている。

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この路地の奥にお店があります。写真撮影は禁止なので、今回は外観のみ。

お店に入ると、店主さんから、「おおきに、ようこそ。よくここが分からはりましたなぁ」と声をかけられる。席は6席しかないので、どうぞ相席で、ということで先客の方と同席した。硝子のテーブルの上に薔薇の花が豪勢に生けられている一方で、縁側があり(黒猫のオブジェも素敵なのだ)、骨董品があり、和と洋とが極上の趣でしつらえてある。

先客の方もおひとりだったので、熊本のことやカフェめぐりのことなどをお話しした。おすすめのカフェなども教えていただく。教えてもらったなかでは、二条小屋というカフェが気になる(なんと、立ち飲みカフェなのだそうだ)。

「コーヒーカップ、凄く素敵ですね」と店主さんに言ったら、「これはオールドノリタケで、昭和20年代のものなんですよ。そんな古いもんには見えへんでしょう」と教えてもらった。確かにすっきりとしたデザインがとてもモダンに見える。

「京都はどないですか」と店主さんに聞かれる。「すごく楽しいです」と私。「そないでしょう。いけずな人とかおまへんですからなぁ」

まるで個人的に人のお宅におじゃましたかのようなカフェ体験。週末限定だというお菓子をいただくために、またそのうち訪れる予定である。